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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)4041号 判決

原告 田口久二

右訴訟代理人弁護士 野宮利雄

同 八木良和

被告 今井力

主文

一  被告は原告に対し、

1  金五五〇万円及びこれに対する昭和五二年四月二六日から支払ずみまで年六分の割合による金員、

2  原告において、

(一)  別紙手形目録(1)記載の手形を昭和五二年七月三一日以後の支払をなすべき日又はこれに次ぐ二取引日以内に支払場所に呈示したときはさらに金五〇万円、

(二)  同目録(2)記載の手形を同年八月三一日以後の支払をなすべき日又はこれに次ぐ二取引日以内に支払場所に呈示したときはさらに金五〇万円、

(三)  同目録(3)記載の手形を同年九月三〇日以後の支払をなすべき日又はこれに次ぐ二取引日以内に支払場所に呈示したときはさらに金五〇万円、

(四)  同目録(4)記載の手形を同年一〇月三一日以後の支払をなすべき日又はこれに次ぐ二取引日以内に支払場所に呈示したときはさらに金五〇万円、

の各支払をせよ。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  この判決は第一項及び第三項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告は原告に対し、金五五〇万円及びこれに対する昭和五二年四月二六日から支払ずみまで年六分の割合による金員、並びに同年七月三一日、同年八月三一日、同年九月三〇日、同年一〇月三一日の各期日に各金五〇万円ずつの各支払をせよ。

2  主文第三項と同旨

3  仮執行宣言

二  被告

原告の請求を棄却する。

第二当事者の主張

一  請求原因

(貸金請求)

1 原告は一般貨物自動車運送事業を営む訴外三和運輸株式会社の代表取締役であり、被告は一般小型自動車運送事業を営む訴外同栄運輸株式会社(以下訴外会社という)の取締役である。

2 原告は訴外会社に対し、左記のとおり金員を貸し付けた。

(1) 貸付日 昭和五二年二月二六日

貸付金額 四〇〇万円

返済期 同年三月二五日

(2) 貸付日 昭和五二年四月九日

貸付金額 一五〇万円

返済期 同月二五日

3 訴外会社が右各金員を借り受けた際、被告は原告に対し、訴外会社の原告に対する右各貸金債務につき連帯保証をする旨約した。

4 よって、原告は被告に対し、右各貸金合計五五〇万円及びこれに対する弁済期の経過した後である昭和五二年四月二六日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(約束手形金請求)

1 原告は、別紙手形目録(1)ないし(4)記載の約束手形四通を所持している。

2 被告は、訴外会社の署名のある前記各手形に拒絶証書作成を免除して、裏書(但し、被裏書人欄白地)をした。

3 訴外会社は昭和五二年四月二五日に二回目の手形不渡により取引停止処分を受け、訴外会社の現在の債務総額は七七〇〇万円以上である。そして、被告は、訴外会社の右債務の大部分につき連帯保証をしているところ、現在資力が殆んどない。

右の事情のもとでは、被告が将来満期の到来する前記各手形について満期日にその支払をする可能性はない。

4 よって、原告は被告に対し、前記各手形について将来到来すべき各満期である昭和五二年七月三一日、同年八月三一日、同年九月三〇日、同年一〇月三一日に各手形金五〇万円をそれぞれ支払うことを予め求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因事実は全部認める。

理由

一  請求原因事実は、すべて当事者間に争いがない。

二  貸金請求について

右事実によれば、原告の貸金請求に関する部分は、理由があるからこれを認容すべきである。

三  手形金請求について

別紙手形目録(1)ないし(4)記載の各手形はいずれも本件口頭弁論の終結時までに満期が到来しなかったものであり、裏書人である被告に対し右各手形金の支払を求める本件手形金請求はいわゆる将来の給付を求めるものであるが、前記事実関係、即ち、右各手形の振出人である訴外会社は昭和五二年四月二五日に二回目の手形不渡により取引停止処分を受け、訴外会社の現在の債務総額は七七〇〇万円以上であるところ、被告は訴外会社の右債務の大部分につき連帯保証をしているが、現在資力が殆んどないという事実関係のもとでは、原告は右目録(1)ないし(4)記載の各手形について予めその請求をなすべき必要があるものと解すべきである。

ところで、原告は、本訴において右各手形についてその呈示を条件とすることなく満期に手形金の支払をなすよう求めている。

しかしながら、本件手形金請求は前叙のとおり将来の給付を求めるものであり、かつ又裏書人に対する遡求権の行使であるところ、本件においては支払拒絶証書作成義務の免除のある場合であるから、原告は、右目録(1)ないし(4)記載の各手形を支払呈示期間内(支払をなすべき日又はこれに次ぐ二取引日以内)に支払場所に呈示してのみ裏書人である被告に対し手形上の権利を行使することができるものと解するのが相当である。

そうだとすると、前記各手形金に関する原告の請求については、右に述べた手形の呈示を条件とする限度では理由があるが、満期における無条件の支払を求める部分は失当であるから棄却を免れない。

四  以上の次第であるから、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九二条但書を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 飯田敏彦)

〈以下省略〉

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